よかった

今日は客室清掃のバイトを初めて10回目の出勤日だった。

こんな自分が10回も出勤できるとは。途中で2回ほど休んでしまったけれど自分の中ではよくやれている方だと思う。

でも今日は部屋数も多くてペアの人も知らない人だった。すごく不安になって一瞬休みたくもなってしまった。でも帰りにコンビニでお菓子を買うと決めて起き上がった。



いつも通りに清掃をこなしていくのだが、やっぱり人よりもスピードが遅い。
ペアの人も未経験なのにすいすいと進めていく。効率良く動けるからなのか単に自分の効率が悪いのか。

もう初めて10日も経つのにいまだにちょこちょこと何かを忘れることがある。掃除していたのに、ふと思い出した業務があれば放り出してそれをやり始める。そのうちにあれもあらなきゃとバタバタする。そしていつのまにか掃除することを忘れてしまう。あとから思い出してバタバタ急ぐ。

正直これが自分にとっての普通であり、もう自己嫌悪に酔うことにも飽きた。当たり前だし諦めている。掃除をしながらつくづく自分の無能さを実感した。きっとここで働く人とも、それ以外の人とも、自分は頑張っても並ぶことができないんだと思った。


掃除が終わり帰りの支度をしていると、所長に

「銀オムさんの清掃はきれいだってチェッカーから聞いてるよ」

と言われた。少しだけ嬉しかった。帰り道で何回も頭の中でリピートした。やっぱりすごく嬉しかった。コンビニには寄らなかった。

何も感じられなかったけど、少しだけできるようになったことがあるんだなって思った。よかった。人より遅いしどんくさいしうっかりすることはあっても、底から動けないわけではないと思った。

今日はバイトを休まなくてよかった。起き上がってよかった。