「こういう人間」

最近から新しく掛け持ちのバイトを始めた。

客室清掃のバイトで新しいホテルなので、やや潔癖の自分には嬉しい。そもそも潔癖なのにどこの誰が使ったかわからないトイレや水回りを掃除するバイトを始めたのは大丈夫なのだろうか。

責任者のおじさんは優しくて話しやすい。社員の方も話しやすい。
だがパートの責任者の人は苦手なタイプだった。その隣りにいる側近みたいな女の人もものの言い方が苦手だ。

今日もペアのおばちゃんとせっせと掃除をした。いい人もいて話しやすくて良くしてくれる。珍しくしばらくは頑張れそうなバイトを見つけることができた。

世の中の人は本当にすごい。1つの仕事をしばらく続けられるし、嫌なことや苦しいことがあっても逃げずに立ち向かう強さをもっているひとが多いと思う。そしてそれはこの世の基盤でありできて当然のこと。



基盤にはまることができない自分は弾き飛ばされて端の方を歩いている。

「こういう人間はただでさえ足手まといなんだから、世の中の人と同じ社会で生活するためには端の方を歩くべきなんだ。」

2年前の秋、いつかの誰かにそう言われた。
自分自身に対して言われたわけではなく、その人にとっての「こういう人間」との出来事の話で出た言葉だった。これが世の中の本音なんだと初めて知れた。

「こういう人間」の部分をひた隠しにして今までなんとか精一杯生きていた。この数日後から心療内科に通う生活が始まった。

秋になるとあの日々のことを思い出す。毎日思い出す。思い出してその時見ていた電車からの景色や病院までの道のり、プラットホームのなかで何度も聴いた発車メロディだったりを思い出す。でも見ていた景色の大半は俯いた先にあった自分の足元だった。

いまでは働くこと自体にちいさなトラウマを抱えるようになってしまった。社会で生きていくことがもっと難しくなってしまった。そのなかでいま再び働き始めてみた。またいつかどこかで悪い方向に進んでいく気がする。そう考えるとやっぱりこの先が不安で仕方ないし怖い。

どうしてこんなになってしまったのだろうか。あの言葉のせいだけではないと思う。きっとこれまで自分のSOSに気づけなかったからだとおもう。こうなってしまっては本当に元通りにならないんだな。

まあでも、それでも来る明日をなんとかがんばってみよう