子供が苦手である。
赤ちゃんも苦手だ。
泣きわめいたり騒がれたり、キンキンとした音が苦手なのだ。
特に最近の野良ガキというのは生意気で、悪いことをしても知らんふりをする。
そこが特に苦手な部分だ。赤ちゃんはしょうがない。
この野良ガキというのは、だいたい小学3年から6年あたりのものと考えていいだろう。
今日は久しぶりのバイトの日だった。
イベント会場での催し物は子供向けでテンションはだだ下がりだった。
いつものように時間がすぎるのをただ待ち続ける日のはじまりだった。
けれど、今日はいつもと違った日になった。
昼過ぎから勤務し始めて、夕方にさしかかったころ。
小学6年のときの担任の先生が見えた。
あの頃はまだ20代前半できっと新任で自分のクラスを受け持ってくれたのだろう。
話しやすくて時には厳しくて優しい、舞ちゃん先生だった。
舞ちゃん先生は、すごくきれいになっていた。
あの頃の面影とかを残しているのに、本当にきれいな人になっていた。
きっと舞ちゃん先生は私のことなど覚えていないだろう。
でも、ほんとうに懐かしくて、騒がしい会場の中でこの日は今までで1番穏やかな気持になれた。
話しかけることも、目を合わせることもしなかった。
あの頃の自分と今の自分を比較されるかも知れなくて、幻滅されるかも知れなくて。
見回りをするふりをして、泣きそうになりながらあの頃を思い出した。
舞ちゃん先生は、かっこよくておしゃれな男の人と一緒だった。
その男の人は小さい女の子を抱っこしていて、舞ちゃん先生は抱っこ紐をつけて赤ちゃんを抱いていた。
小さい女の子は、舞ちゃん先生を「お母さん」と呼び、男の人を「お父さん」と呼んでいた。舞ちゃん先生、奥さんとお母さんになったんだ。
とおくの方へ歩いていって、見えなくなっていく舞ちゃん先生、そしてそのご家族。
私にとってはいつまでも、舞ちゃん先生なんだけど、この日からは舞ちゃん先生はお母さんになった。どこにでもいる、お母さんのひとり。
しあわせそうな舞ちゃん先生を見て、嬉しくなった。
ここまでの紆余曲折は存じ上げないが、幸せそうで、楽しそうで、本当に良かった。
舞ちゃん先生、どうかこのままずっと幸せな日々を過ごしてくれるといいな。